海外の宇宙ニュース:NASAインジェニュイティが飛行に成功!

NASAのパーサヴィアランスローバーが撮影した火星の映像。2021年4月19 日、火星ヘリコプターインジェニュイティが地球以外の惑星で初めての飛行に成功した様子をとらえている。
(NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)

2021年4月19日、NASAの小型ヘリコプター・インジェニュイティが初めて ”赤い惑星” の上空を飛行!インジェニュイティは3メートル上昇してホバリングを開始し、地球以外の惑星で初めての、動力つきで制御された飛行となりました。

人類初となる地球以外の惑星での動力飛行の成功おめでとうございます。2018年にJPLに訪問し、Ingenuityの試作機を見せていただく機会がありました。その際に、チーフエンジニアのBalaramさんにIngenuity開発のいろいろな苦労話を聞かせていただいていたので、私も本当にうれしく思います。ソジャーナから始まった火星ローバがその後のスピリット、オポチュニティ、キュリオシティ、パーサヴィアランスとつながったように、Ingenuityが今後の本格的な火星の飛行探査の道筋を切り開いてくれたと思っています。日本も負けないよう頑張ってきたいと思います。

大山聖(宇宙飛翔工学研究系 准教授)

インジェニュイティは、火星で空中探査が可能かどうかを確かめるために設計された技術実証ミッションです。これは決して簡単なことではありません。火星の大気は非常に薄く、その地表には地球のわずか1%の気圧しか存在していません。そのため、物体を持ち上げることがとても難しく、わずか1.8 kgのヘリコプターを浮かせるためにインジェニュイティの翼は1分あたり2500回(RPM)の速さで回転する必要があります。ちなみに、地球上でのヘリコプターは通常450~500RPMで回転しています。

NASAのドラゴンフライミッション
想像図 (John Hopkins APL)。

地球以外の惑星における動力飛行の成功おめでとうございます。将来の惑星探査の発展につながる画期的な技術となるでしょう。次に動力飛行が実施される太陽系天体は、火星よりも濃密な大気をもつ極寒の土星衛星タイタンでしょうか、ドローン型探査機Dragonflyに搭載する地震計の開発を進めています。

白石浩章(太陽系科学研究系 助教)

インジェニュイティは地球の外で飛行する最初の回転翼航空機となりましたが、もちろんこれだけでは終わりません。NASAのドラゴンフライミッションでは、土星の衛星タイタンを8基の回転翼を使って飛行することになっています。ドラゴンフライは2027年の打ち上げを予定していて、ISASで設計された地震計を搭載します。

Ingenuityの初フライト成功おめでとうございます。地球以外の天体で、本当にヘリコプターが飛んだなんて胸が熱くなりました。太陽系探査は、興味深い天体に行くことも大事ですが、これからは、行った先でこのような面白いミッションを実施することが非常に重要になると思っております。今後、我々もIngenuityや2019年のはやぶさ2のインパクター実験のような、世界をびっくりさせるようなミッションを実現させたいと思います。

佐伯孝尚(はやぶさ2 プロジェクトエンジニア)

(文: Elizabeth Tasker/ 訳:磯辺真純)


“海外の宇宙ニュース” シリーズは世界中の宇宙開発の重要な発展に焦点をあて、私たち研究者のこれら成果への興味を共有する場です。