リュウグウとベンヌ:あなたの質問にお答えします!
二つの小惑星。二つの国。二つの偉大なミッション!
「はやぶさ2」と「OSIRIS-REx」は、リュウグウとベンヌ†という2つの異なる小惑星を探査しました。「はやぶさ2」は2020年末にリュウグウのサンプルを地球に持ち帰り、「OSIRIS-REx」は2023年にベンヌで採取したサンプルを持ち帰る予定です。この2つのミッションには世界中の科学者が参加しており、今週はNASAとJAXA双方のチームメンバーが、これまでに判明したことに関連する皆さんの質問にお答えします。
科学者に質問したい方は「はやぶさ2」のTwitterアカウント(@haya2_jaxa、@haya2e_jaxa)、NASAゴダード宇宙飛行センターのTwitterアカウント(@NASAGoddard)、またはInstagramやFacebookでお問い合わせください。質問は、9月9日(金)いっぱいまで、英語でも日本語でも受け付けています。
† 「Bennu」の日本語表記として「ベンヌ」という表記がメディアでは一般的に用いられますが、英語の発音に近いのは「ベヌー」です。
橘 省吾, JAXA
宇宙化学者、「はやぶさ2」サンプル採取システムおよびサンプル分析リーダー、「OSIRIS-REx」共同研究者
私は、地球を含む多様な太陽系惑星がどのような要因で作られたかに興味があります。特に、実験室での実験、地球外物質の分析、天体観測、モデリング、太陽系探査を組み合わせて、初期太陽系の化学進化を理解することに重点を置いています。
「はやぶさ2」の科学目標の設定、サンプル採取システムの開発、サンプル分析の指導に携わってきました。また、NASAの「OSIRIS-REx」ミッションの共同研究員も務めています。
ハンナ・マクレーン (Hannah Mclain), NASA
NASA ゴダード宇宙飛行センター(GSFC) 宇宙生物学分析研究所 (AAL) 宇宙化学者
私の研究は、隕石、月サンプル、および「OSIRIS-Rex」や「はやぶさ2」などのサンプルリターンミッションの有機物分析です。私の研究の焦点は、地球外試料の有機的な複雑さと、生命の起源に必要な前生物学的な分子のひろがりを研究することです。
NASA GSFCで働く中で最も気に入っていることは、一緒に働く仲間や貴重なサンプルです。分析する数カ月前に宇宙で採取されたばかりのサンプルに触れることができるのは、いつも素晴らしいことです。
臼井 寛裕, JAXA
地球化学者、JAXAキュレーションチームリーダー、「OSIRIS-REx」チームサイエンティスト
JAXA宇宙科学研究所で小惑星リュウグウで採取したサンプルのキュレーションチームのリーダーを務め、2024年度に打ち上げられる火星の衛星フォボスからのサンプルリターンミッション(火星衛星探査計画:MMX)ではサンプル分析ワーキングチームの主任研究員として活動しています。
また、NASAの小惑星ベンヌからサンプルリターンを行う「OSIRIS-REx」サンプルリターンミッションの国際科学チームの一員であり、ゴダード宇宙生物学センターのメンバーでもあります。
ホセ・アポンテ (José Aponte), NASA
NASAゴダード宇宙飛行センター (GSFC)宇宙生物学分析研究室 宇宙化学者
私は、地球外サンプル(隕石、小惑星、月など)に存在し、地球や他の場所での生命の起源に関係していると思われる小さな有機化合物の特性評価と定量を行う分析手法の開発に取り組んでいます。
また、ゴダード宇宙生物学センターのNASA宇宙生物学研究所の科学共同研究員であり、小惑星サンプルリターンミッション「OSIRIS-REx」「はやぶさ2」の科学チームの共同研究員でもあります。
坂本 佳奈子, JAXA
JAXAキュレーションチームメンバー、キュレーションチームとSMPチームの調整役、専門はコンタミネーションコントロール
JAXA宇宙科学研究所の主任研究開発員で、MMX(Martian Moons eXploration)ミッションのキュレーションメンバーを務めています。サンプル採取システムの開発と、サンプルのコンタミネーションコントロールの経験があります。
また、「はやぶさ2」のサンプラー(SMP)チームの一員として、「はやぶさ2」のサンプル回収作業にも携わりました。
ジェイソン・ドワキン (Jason Dworkin), NASA
NASAゴダード宇宙飛行センター 「OSIRIS-REx」プロジェクトサイエンティスト兼宇宙生物学シニアサイエンティスト
太陽系の歴史や生命の起源をより深く理解するために、地球外試料の可溶性有機物とその類縁体を研究しています。また、「OSIRIS-REx」が収集したベンヌの試料の科学的価値を最大限に高めるための研究を行っています。
宮崎 明子, JAXA
地球化学者、JAXA「はやぶさ2」サンプルキュレーションチームキュレーター
JAXA宇宙科学研究所のキュレーションチームで、「はやぶさ2」の小惑星リュウグウのサンプルのキュレーションを担当しています。特に、サンプルを取り扱う道具(真空ピンセット)の準備や、「はやぶさ2」サンプルチャンバー開封後のリュウグウサンプルの分析に携わっています。
ジェイミー・エルシラ (Jaime Elsila), NASA
NASAゴダード宇宙飛行センター(GSFC) 太陽系探査部門副部門長代理、宇宙生物学者
私は「炭素質コンドライト」に分類される小惑星、アポロのサンプル、スターダスト・ミッションが持ち帰った彗星物質中のアミノ酸など、地球外有機化合物の安定同位体シグネチャーの研究をしています。小惑星(117657)Jamieelsilaは、私の名前にちなんで名づけられました。
奈良岡 浩, 九州大学
有機宇宙地球化学者、「はやぶさ2」可溶性有機物チームリーダー
私はこれまで、リュウグウのサンプルや炭素質隕石など、地球外物質中の有機化合物の研究を行ってきました。また、14ヶ月間南極に滞在し、氷床上の隕石を採取しました。
ダニエル・シムカス (Danielle Simkus), NASA
NASAゴダード宇宙飛行センター 宇宙生物学分析研究所 博士研究員
私のNASAゴダードでの研究は、隕石やその他の地球外サンプルに含まれる前生物学的有機分子の実験室分析に重点を置いています。私の研究の目的は、生命の起源に関連する前生物学的有機物の合成と保存に関与する、生体のプロセスをよりよく理解することです。
高野 淑識, JAMSTEC
有機宇宙化学者、「はやぶさ2」可溶性有機物チーム副リーダー、「OSIRIS-REx」チームサイエンティスト
私は、有機分子の進化に興味があります。「はやぶさ2」のサンプラーチームのメンバーでもありました。小惑星リュウグウのサンプルは、有機物、水、鉱物の相互作用に関する始原的な歴史と現在進行中の有機情報を教えてくれます。
また、NASAの「OSIRIS-REx」サンプルリターンミッションのチームサイエンティストであり、ゴダードアストロバイオロジーセンター(GCA)の共同研究者でもあります。
エリック・パーカー (Eric Parker), NASA
NASAゴダード宇宙飛行センター 宇宙化学者
私の専門分野は、宇宙化学、分析化学、生命の起源です。私は、液体クロマトグラフィーと質量分析に基づく分析技術を応用して、複雑な混合物を分析し、生命にとって重要であると考えられる生体分子を探索する研究を行っています。これには、地球外サンプル(隕石や小惑星など)や、実験室での生物環境シミュレーションから得られたサンプルの分析が含まれます。これらの研究において、注目される分子には、アミノ酸やペプチドが含まれます。
( 訳:戸梶 歩)
関連リンク:
OSIRIS-REx ウェブサイト(外部リンク)