世界の宇宙ニュース:JUICE、打ち上げ間近!

木星氷衛星探査計画「JUICE」は、2023年4月13日、フランス領ギアナのクールーにある欧州宇宙機関(ESA)の射場から打ち上げられることになっています。ESAが主導するこのミッションには、氷に覆われた木星の衛星を探査するための11の科学観測機器が搭載されていますが、うち4つは日本からハードウェアの一部を提供して開発され、さらに2つは日本の研究者が共同研究者として参加することになっています。

私たち日本のグループがJUICEミッションに参加し始めてから約10年が経ちました。JUICEには11の観測機器が搭載されますが、日本は、4つの機器、RPWI、GALA、PEP/JNA、SWIに観測装置の一部を提供して参加しています。また、2つの機器、JANUS、J-MAGにはサイエンスメンバーとして参加しています。日本から提供した装置は、欧州で開発された装置と一緒にJUICE衛星に取り付けられて打ち上げ場所のKourouに運ばれ、4月の打ち上げに向けた準備が進んでいます。私たちが10年をかけて準備・開発した装置がこれまでに誰も行ったことのない場所、木星氷衛星ガニメデに向けて出発します。私たちは今、旅に出る前の少し不安ででもワクワクするそんな気持ちでいっぱいです。これからまだ10年余り続く予定のJUICEミッションですが、今後の活躍にご期待ください。

齋藤 義文(JUICE-ISASプロジェクトマネージャ)

木星の”氷”衛星にはエウロパ、ガニメデ、カリストの3つがあり、表面は固い氷の殻で覆われ、地下には深い海が存在すると考えられています。氷衛星に液体の水が存在すれば、その環境は地球とは大きく異なるとしても、生命居住可能な環境という観点からの魅力的な探査対象です。JUICEは3つの氷衛星の表面と内部海の状態を理解するため、氷衛星そのものと木星の周辺環境を探査することになっています。中でもJUICEが特にフォーカスするのは3つの氷衛星のうち真ん中に位置するガニメデです。エウロパやカリストと異なり、ガニメデは固有磁場を持っていて、木星本体の磁気圏と相互作用しています。

ガニメデは固有磁場を持っていて、木星の強く大きな磁場勢力圏の中に独自の磁場勢力圏を作っています。その磁場の影響を受けて運動するプラズマ粒子がガニメデ表面にぶつかると飛びでてくる高速中性粒子。地球や木星のオーロラのように周りのプラズマで何が起こっているのかを教えてくれる情報源です。PEP/JNA がどんな観測をするのか楽しみです。

浅村 和史(JAXA宇宙科学研究所 PEP/JNA日本側とりまとめ)

JUICEはエウロパ、カリスト、ガニメデのフライバイ観測を行い、その後ガニメデの周回軌道に入る予定です。JUICEに搭載されるレーザ高度計GALAを用いて、氷地殻の下にある内部海の情報を探査することになっています。

我々(GALA-Japan チームは)、JUICEに搭載するガニメデレーザ高度計(GALA)を、ドイツ(主導)、日本、スイス、スペインによる国際協力で開発しています。GALAは「ガーラ」と読みます。GALAの主な科学ターゲットは、氷衛星、特にガニメデの

・氷でできた表面地形

・地下海

です。ガニメデには、液体の水から成る広大な地下海が存在する可能性が指摘されています。これらの目標のため、GALAはガニメデ周回軌道から、ガニメデ表面までの距離測定を高精度で行ってスキャン・モニターします。そしてガニメデの3Dマップを獲得し、潮汐(潮の満ち引き)による全体形状の微小な変動の有無等を調べます。氷衛星にレーザ高度計を適用するのは世界初です。また天体全体の潮汐変形を利用して、直接は見えないマクロな地下海に迫るのはGALAならではです。

塩谷 圭吾(JUICE/GALA-Japanプロジェクトマネージャ)

木星への旅路は長く、JUICEが木星系へたどり着くのは2031年の予定です。到着後、探査機は3つの氷衛星に複数回のフライバイを行った後、2034年にガニメデの周回軌道に入り、氷衛星を周回する初のミッションとなる予定です。今後のCosmosブログの記事では、日本が開発を担当したJUICE搭載の機器についても紹介します。

(文: Elizabeth Tasker/ 訳:磯辺真純)


“世界の宇宙ニュース” (旧”海外の宇宙ニュース”) シリーズは世界中の宇宙開発の重要な発展に焦点をあて、私たち研究者のこれら成果への興味を共有する場です。

関連リンク:

JUICE Japan ウェブサイト